「検査に行ってほしいと言っても、『俺は大丈夫』の一点張りなんです」

妊活のご相談で、この言葉を本当によく伺います。基礎体温をつけるのも、病院に通うのも、食事に気を配るのも、いつのまにか自分ひとり。夫は悪気がないのかもしれません。それでも他人事のように見えてしまい、そのことがいちばんつらい、とおっしゃいます。

こんにちは。青森市の「くすりの厚生会」店長で、中医学の専門家の岩本です。

実は私自身も、不妊治療を経験した男性のひとりです。妻とふたりで検査を受けたとき、「原因の半分は男性側にもある」と言われ、強いショックを受けました。それまでは、どこかで「自分は関係ない」と思っていたのです。だからこそ、検査を避けたい男性の気持ちも、ひとりで頑張る女性のつらさも、両方よくわかります。

この記事では、夫が妊活に前向きになれない理由と、妻ができることを、研究データと中医学の両面からお伝えします。

不妊の約半分には、男性もかかわっています

まず知っていただきたいのが、この数字です。

WHOが7273組のカップルを対象に行った調査では、男性のみに原因があるケースが24%、男女ともに原因があるケースが24%、女性のみが41%、原因不明が11%でした。男性側にも原因があるカップルは、合わせて**48%**になります。

より新しいデータもあります。ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)によると、生殖年齢のカップルの6組に1組が不妊を経験します。原因の内訳は、男性のみが20〜30%、女性のみが20〜35%、男女ともが25〜40%とされています。

不妊の原因(WHO調査)割合
男性のみ24%
男女とも24%
女性のみ41%
原因不明11%

もうひとつ知っておいていただきたいのは、男性不妊には自覚症状がほとんどないことです。性交障害がなければ、男性不妊の方には自覚症状がありません。そのため、なかなか妊娠しないときは、女性だけでなく男性も一緒に検査を受けることが大切です。

海外の専門医からは、こんな声も聞かれます。女性側の検査に何か月、ときには何年もかけたあとで、ようやく夫が精液検査を受けることは珍しくありません。そしてそのとき初めて、主な原因が精子の質にあったとわかるケースもあります。

妊活は、気持ちの面だけでなく、体のしくみの面から見ても「ふたりのもの」なのです。

なぜ夫は協力的になれないのでしょう

「協力してくれない」と感じると、つい「冷たい人なのでは」と思ってしまいますよね。でも多くの場合、背景にあるのは冷たさではありません。

理由1:「不妊は女性の問題」と思い込んでいる

不妊は女性だけの問題だと受け取られがちで、男性を話し合いに巻き込むのは難しいという認識が、世界的に広く共有されています。日本でも同じです。自分に原因がある可能性を、そもそも考えたことがない男性は少なくありません。

理由2:検査結果を知るのが怖い

男性にとって、生殖力は「男らしさ」と深く結びついていることがあります。そのため、精子の質が低いかもしれないという可能性は、とても個人的なことに感じられます。受診どころか、パートナーと率直に話すことさえ難しくなってしまうのです。

「行きたくない」という言葉の裏には、「怖い」という気持ちが隠れていることが多いのです。

理由3:どう関わればいいのかわからない

病院に通うのも、体の変化を感じるのも妻のほう。夫は「自分にできることがない」と感じ、仕事に気持ちを向けてしまうこともあります。

実はこの「避ける」行動は、夫婦関係にも影響します。2,250人を追跡したデンマークの研究では、次のような結果が出ています。男性の場合、不妊を秘密にすること、夫婦間の会話が難しいこと、回避的な対処(仕事に没頭して気をそらすなど)は、「妊活を通じて夫婦の絆が深まった」という実感が低いことの予測因子でした。反対に、気持ちを表に出したり、人に助言を求めたりする対処は、その実感が高いことの予測因子でした。

つまり、夫が気持ちを言葉にできる環境をつくることが、夫婦の絆を守ることにつながります。

妻ができる、5つのやさしい一歩

1. 主語を「あなた」から「ふたり」に変える

「あなたも検査に行って」と言われると、責められているように感じてしまうものです。「ふたりで一度、体の状態を確かめてみない?」と、主語を「ふたり」にしてみてください。それだけで、受け取り方が大きく変わります。

2. 感情ではなく、データを一緒に見る

「どうしてわかってくれないの」という気持ちは、もっともです。ただ、男性には数字のほうが届きやすいことがあります。先ほどの「48%」の表を、一緒に見てみるのもひとつの方法です。この記事をそのまま見せていただいても構いません。

3. 検査のハードルを下げる

「泌尿器科に行くのは気が重い」という男性は多いものです。でも、精液検査は婦人科でも受けることができます。奥さまの通院先で一緒に受けられるなら、心理的な負担はぐっと軽くなります。

費用面の不安にも答えられます。2022年4月からは、タイミング法や人工授精といった一般不妊治療に加えて、体外受精や顕微授精、男性不妊の手術などの生殖補助医療も保険適用の対象になりました。保険診療では、治療計画を作成し、患者本人とそのパートナーに説明することが求められています。制度のうえでも、不妊治療は「夫婦で受けるもの」と位置づけられているのです。

4. 小さな「一緒」を増やす

いきなり検査が難しくても、生活習慣なら一緒に始められます。精子がつくられるまでには2〜3か月ほどかかります。薬の治療や手術のあとに精子が増えたり、運動率がよくなったりするにも、それくらいの時間が必要です。だからこそ、今日から始めることに意味があります。

喫煙は精液所見を悪化させ、性交障害も起こしやすくするため、男性不妊の原因になります。「あなたのため」ではなく、「ふたりの体のため」に禁煙や早寝を始めてみる。夕食を一緒に整えてみる。休日に散歩してみる。この「一緒に」が、夫の当事者意識を少しずつ育てていきます。

5. 第三者の力を借りる

妻から言われると反発してしまうことも、医師や専門家から聞くと素直に受け止められることがあります。夫婦ふたりだけで抱え込まないでください。

中医学から見た「ふたりで整える」意味

中医学では、男性の生殖力は「腎(じん)」の働きと深くかかわると考えます。ここでいう「腎」は腎臓だけを指すのではありません。生命力、ホルモンのバランス、体の根っこにある元気を含む大きな概念です。そこに、体と心を動かすエネルギーである「気(き)」が加わります。

タイプよくある症状中医学での見方
腎虚(じんきょ)タイプ冷え、腰痛、だるさが抜けない生殖の力の根っこが不足
気虚(ききょ)タイプ疲れやすい、やる気が出ない気が足りず、精子をつくる力が弱まる
瘀血(おけつ)タイプ肩や体がこる、顔色が暗い血のめぐりが悪く、栄養が届きにくい

ここで、よくいただく質問にお答えしておきます。「下半身は温めるのがいいのに、睾丸は冷やしたほうがいいの?」というものです。

実は、どちらも正しいのです。精子は体温より2〜3℃低い温度でよくつくられます。そのため睾丸そのものは温めすぎないことが大切です。一方で中医学のいう「温める」は、腰・下腹部・足のめぐりをよくすることを指しています。長風呂やサウナ、ぴったりした下着は避ける。そのうえで、腰まわりや足首は冷やさない。この両立がポイントです。

中医学では、焦りやストレスが「気」のめぐりを滞らせると考えます。夫を責める言葉は、夫の気だけでなく、言ったあなた自身の気も消耗させてしまいます。だからこそ、ふたりで体を整える時間そのものに大きな意味があるのです。

それでも夫が動いてくれないときは

どれだけ工夫しても、すぐには動いてくれないこともあります。そんなときは、まずご自身の体を整えることを優先してください。そして、「いつまでに検査をするか」という期限だけは、ふたりで話し合っておくことをおすすめします。

年齢によって選べる治療は変わっていきます。たとえば保険診療では、治療開始時に女性が43歳未満であることが条件です。回数にも上限があり、40歳未満は1子ごとに通算6回まで、40歳以上は通算3回までとなっています。時間は、ふたりにとって大切な資源です。

よくあるご質問

Q. 夫に「男性不妊かも」と伝えると傷つけてしまいそうで怖いです。
A. 「あなたに原因があるかも」ではなく、「ふたりとも一度確かめておこう」と伝えるのがおすすめです。奥さまも一緒に検査を受ける流れにすると、夫だけが責められている感覚が薄れます。

Q. 精液検査はどこで受けられますか?
A. 泌尿器科のほか、婦人科や不妊治療クリニックでも受けられます。奥さまの通院先で相談してみてください。

Q. 漢方薬局に夫を連れて行ってもいいですか?
A. もちろんです。ご夫婦でお越しいただくと、おふたりの体質を同時に見られるので、お話がとてもスムーズに進みます。

まとめ

  • 不妊の約半分には男性もかかわっています(WHO調査で48%)
  • 男性不妊には自覚症状がほとんどなく、検査しないとわかりません
  • 夫が動けない理由は、冷たさではなく「知らない・怖い・わからない」であることが多いです
  • 伝えるときは主語を「ふたり」に。データを一緒に見て、検査のハードルを下げましょう
  • 生活習慣の見直しは、夫婦で一緒に始めると続きやすくなります
  • 研究でも、気持ちを話し合える夫婦ほど、妊活を通じて絆が深まりやすいことが示されています

妻がひとりで頑張る妊活から、ふたりで整える妊活へ。その一歩を、今日から踏み出してみませんか。

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青森市のくすりの厚生会では、男女それぞれの体質に合わせた妊活サポートを行っています。

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