漢方で感情をコントロールする
喜怒哀楽などの感情の変化は気の流れを乱し、病気を引き起こす原因の一つです。
漢方の古典に次のような一文が書かれています。
「怒りは気を上げ、喜びは気を緩め、恐れは気を下ろし、悲しみは気を消す」
意味は、大きな情緒の変動を、病気の引き金になるものとして警戒するようにという内容です。
ここでいう「喜びは気を緩める」のなかには、緊張を解いて、リラックスさせるという意味も含まれています。
しかし、それにも限度があって、過度の喜びは、心身を興奮させ不安定にします。
漢方では、五臓六腑のなかの「心」を、心臓としての機能だけでなく、精神・感情をコントロールする機能としてとらえています。
喜び過ぎたり、はしゃぎ過ぎると、心身の興奮から心の気を消耗し、気持ちが落ち着かず、考えがまとまらない状態ですよね。
落ち着かない心は、不眠、不安感などの精神症状が出やすいんです。
特に更年期にさしかかった女性などには、注意が必要です。
精神を安定させる漢方薬
精神を安定させる生薬(安神薬)には、遠志、酸棗仁、茯苓、柏子仁などがあります。
これらの生薬を中心に組み立てられた、代表的な処方の一つに、天王補心丹があります。
この処方には上記の安神薬以外にも、心気を補う党参、身体に潤いをもたせ興奮を鎮める生地黄、麦門冬などが配合されていて、中国清代の小説「紅楼夢」の中にも、女主人公に処方される薬として登場するんです。
有名な処方。
口渇、手足のほてり、のぼせといった陰虚症状からくる不眠や動悸、息切れ、不安感に効果があります。