肥満と妊孕性低下の関係(胚の質に関して)
体外受精を行う際に、正常BMI群(肥満でない人)と高BMI群(肥満の人)では、胚盤胞形成率に差があることが報告されています。
正常BMI群(肥満でない人)程、胚盤胞形成率が高いことが分かっています。
胚盤胞形成率とは、受精卵が胚盤胞まで育つかどうかをみた確率ということになりますが、この数値が高いほど、全体的に卵子の質がよいという考え方ができます。(採卵をして、いくつか卵子がとれた場合に、胚盤胞形成率が高い人ほど1採卵あたりの妊娠率が高いということが言えます)。
また、肥満患者の胚は、移植後の流産率が非肥満者と比較して高いという報告もあります。
これは体外受精に限らず、自然妊娠の場合でも同様のことが言えます。
ただし、自然妊娠の場合は体外受精と違って体内の胚の状態を見ることが出来ないので、実際に胚盤胞まで育っているのかなどは分かりません。
肥満の人ほど胚盤胞形成率が低い=肥満の人ほど妊娠しにくい
そして、
肥満の人ほど胚の質が悪いことが多い=流産しやすい
ということが言えるかと思います。
肥満の解消=立派な不妊治療
肥満の解消に糖質制限ダイエットがおすすめ。
肥満は不妊の原因になりますが、逆に肥満を解消することで妊娠しやすくなります。
現実、これが難しい。
肥満があって不妊で悩んでおられる方の中には、中々妊娠しないというストレスによってさらに肥満が加速するという方も少なくないようです。
そのため、不妊症における治療で最も難しいのは肥満の解消、ダイエットだともいわれています(そもそも、肥満の解消=それ自体が妊孕性の向上につながる、肥満の解消=不妊治療であるという認識を持つことが大切です)。
過度なダイエットは別の意味で排卵異常など不妊症の原因になることもありますが、適正体重の維持は妊孕性を保つ点で最も重要な要素であるということは間違いないと思われます。
英ウィメンズクリニックサプリメントサポートセンターでは妊活中の食事として糖質制限食を推奨しております。
摂取カロリーに占める糖質の割合を減らし、タンパク質、脂質の割合を増やすことでかなりのダイエット効果が期待できます。
そしてこの際、非常に大切なことは、総摂取カロリー量を減らすのではなく、カロリー量は維持しながら、総カロリーに占める糖質を減らし、タンパク質、脂質に置き換えることです。
脂肪が太ると勘違いされている方が多いのですが、太る原因は糖質です。
不妊治療のストレスから甘いものに走ったり、白米のドカ食いをされる方もおられるかもしれませんが、この際ドカ食いの対象を糖質の多いものから、肉、魚、卵、チーズなどのタンパク質や脂質を多く含むものに置き換えることで肥満のリスクを減らすことができます。
逆にストレスに耐えて食べること自体を制限したり、カロリー制限を中心としたダイエットは続かなくなっていざ脱落した時にリバンウンドが必ずやってきます。
なので、ダイエットとは言っても、食べること自体を制限する必要は全くありません。食べる対象をただ変えればよいだけです。食べていいのです。
治療が上手くいかないストレスのはけ口に食べたくなることもあるでしょう。食べるものさえ選べば食べてもいいのです。
また、カロリー自体を制限すると、人の体は飢餓状態と認識してかえって脂肪を蓄える方向に働くようシステム化されているため、必ず体重が思うように落ちなくなる時期がやってきます(俗にいう停滞期というものです)。
カロリー制限ダイエットは典型的な失敗に至るケースです。停滞期を乗り切るためにはカロリー摂取量自体は維持するため、タンパク質、脂質をしっかりとることです。
妊活の基本は食生活の見直しからということを日頃から訴えています。肥満は不妊の原因になりますが、食べ方を変える、食べる物を選ぶことで肥満を解消し、妊孕性を高めることができます。(食べずに我慢する必要は全くありません)