透析患者(慢性腎臓病)と運動について

目次

注意
慢性腎臓病や透析治療をされている方が運動される場合、必ず医師やリハビリ担当の専門家の指示を受けてください。

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慢性腎臓病(CKD)と運動 ~無理なく健康を守るために知っておきたいこと~

慢性腎臓病(CKD)を抱える方にとって、運動は腎臓の健康を保つ助けとなる重要な要素です。しかし、過剰な運動(オーバーワーク)は逆効果となり、体に負担をかけることもあります。ここでは、CKDと運動の関係について、初心者の方にもわかりやすく解説し、健康的に運動を楽しむポイントを紹介します。さらに、最後には中医学の視点からの考え方もご紹介します。


1. 慢性腎臓病(CKD)とは

慢性腎臓病は、腎臓の機能が長期にわたって低下し、体から不要な老廃物や水分を十分に排出できなくなる病気です。進行すると、腎機能がますます弱まり、最終的には腎透析や腎移植が必要になる可能性もあります。そのため、腎臓の負担を軽くするためにも、生活習慣の改善が非常に重要です。


2. 適度な運動が慢性腎臓病に与える良い影響

多くの研究により、CKDの患者さんにとって適度な運動が腎機能や生活の質を改善する効果があることがわかっています。

(1) 腎臓の機能維持

アメリカの研究によると、ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、腎臓への血流を改善し、腎機能の悪化を抑える可能性があります。軽めの運動は腎臓の働きを助けると考えられています。

(2) 心臓と血管の健康サポート

CKD患者は心血管疾患(心臓病や動脈硬化など)のリスクが高いとされていますが、イギリスの研究では、軽い運動を定期的に行うことで血圧やコレステロール値が改善され、心血管の健康が守られることが確認されています。

(3) ストレス軽減や気分向上

慢性疾患はストレスや不安感を引き起こしやすいですが、日本の調査では、週に2~3回の軽い運動で気分が改善し、ストレスが減少することが報告されています。運動によるリフレッシュ効果が、心身の健康に良い影響を与えます。


3. 運動が「オーバーワーク」になった場合のリスク

CKD患者にとって、無理をしすぎた運動はかえって健康に悪影響を及ぼします。以下の点に注意して、安全な範囲で運動を行いましょう。

(1) 腎臓への負担増加

過度の運動により乳酸や老廃物が大量に発生すると、腎臓がこれらを処理するための負担が増え、かえって腎機能を悪化させる可能性があります。

(2) 電解質バランスの乱れ

運動で大量の汗をかくと、体内のナトリウムやカリウムなどの電解質が失われます。CKD患者はもともと電解質のバランスが崩れやすく、筋肉のけいれんや不整脈が起こるリスクが高まります。

(3) 脱水症状

CKD患者は水分制限が必要なことが多く、過度の運動で大量に汗をかくと脱水症状に陥ることがあります。脱水症状は腎臓にさらに負担をかけ、体調を悪化させる原因となります。


4. 安全に運動を続けるためのポイント

オーバーワークを避けて、CKD患者でも安全に運動を楽しむための基本的なポイントをご紹介します。

  • 軽めの運動を選ぶ:激しい運動は避け、ウォーキングやサイクリングといった軽めの有酸素運動を選びましょう。会話ができる程度の強度が目安です。
  • 運動時間をコントロールする:1回の運動は20~30分程度、週に2~3回から始めると無理がありません。慣れてきたら週3〜5回に増やしても良いですが、体調を確認しながら調整してください。
  • 体調のサインを見逃さない:息切れや異常な疲労感がある場合は、すぐに運動を中止し、医師に相談しましょう。

5. オーバーワークを防ぐためのセルフチェック

運動が過剰になっていないか、次のセルフチェックで確認してみましょう。

  • 運動後に疲れが抜けない:通常、運動後の疲れは1〜2日で回復します。それ以上疲労が続く場合は運動が多すぎるかもしれません。
  • 会話ができないほど息が乱れている:運動中に息が上がりすぎる場合は、強度を下げたほうが良いでしょう。
  • 体に痛みや違和感がある:関節や腎臓のあたりに痛みが出た場合は、体が負担を感じているサインです。

中医学で見る慢性腎臓病と運動

中医学では、腎臓は「腎」と呼ばれ、エネルギー(気)を蓄える「生命の源」とされています。腎は身体の基礎を支える役割があり、運動による「気」の循環は腎の健康にとって重要ですが、過度の負荷は「気」を損傷することになります。

  • 適度な運動で「腎気」を補う:軽い運動は「気」を整え、腎の働きを助けると考えられています。
  • 「陰」と「陽」のバランス:中医学では、腎は「陰陽」のバランスを司るとも考えられています。激しい運動は「陽」を過剰に消耗させ、腎の「陰」を傷つけることもあるため、無理をしない軽い運動が推奨されます。
  • 腎の保養:腎をいたわるためには、「気」を損傷しないように日々の生活で無理をしないことが大切です。運動は腎の「気」を補うための一環であり、無理のない範囲で続けることがポイントです。

慢性腎臓病と運動の関係について、腎臓を守りながら健康的に生活を楽しむために、無理のない範囲で適度な運動を取り入れましょう。中医学の考え方も参考にしながら、腎臓の健康を意識し、長く続けられる生活習慣を目指してください。

この記事の内容に関連する参考サイトや論文について

  1. J-STAGE (科学技術情報発信・流通総合システム)
  • J-STAGEは、日本国内で発行されている学術論文や研究成果をオンラインで公開しているプラットフォームです。慢性腎臓病(CKD)と運動の関係に関する日本の研究や臨床報告が多数掲載されており、CKD患者に対する運動の効果やリスクについて詳しく理解することができます。
  • URL: https://www.jstage.jst.go.jp/
  1. National Institute of Health (NIH) – PubMed
  • PubMedはアメリカ国立衛生研究所(NIH)が運営する、生命科学や医学に関する文献を検索できるデータベースです。CKDと運動に関する国際的な研究が数多く登録されており、最新の研究結果やエビデンスを参考にできます。特にCKD患者の心血管リスクの低減や腎機能への影響についての研究が豊富です。
  • URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/
  1. ScienceDirect
  • ScienceDirectはエルゼビアが提供する学術論文のデータベースで、医療や科学技術に関する幅広い分野の研究論文が閲覧できます。CKDと運動に関する最新の研究が掲載されており、特にアメリカやヨーロッパで行われた運動療法の有効性や安全性についての論文が見つかります。
  • URL: https://www.sciencedirect.com/
  1. 日本腎臓学会 (Japanese Society of Nephrology)
  • 日本腎臓学会は、腎臓病に関する医療情報や研究成果を発信する学術団体です。CKD患者の運動指導に関するガイドラインや、日本国内でのCKD管理に関する最新の知見を得ることができます。
  • URL: https://www.jsn.or.jp/
  1. 中医学関連の情報サイト
  • 中医学に関する基礎的な知識を学べるサイトとしては、日本中医薬研究会や中医薬学会のサイトがあります。腎の「気」や「陰陽」のバランスについての考え方や、CKDに対する中医学的なアプローチについての参考情報が得られます。
  • URL: https://www.j-pmda.or.jp/ (日本中医薬研究会)

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