大正や昭和初期の母子手帳や戸籍を見ると、40代や50代での出産記録が意外と多く残っています。
「昔の女性の方が妊娠力が高かったのでは?」と思う方も多いでしょう。
しかし、この数字には大きな“カラクリ”があります。
この記事では、昔の高齢出産の真実と現代女性が妊娠しにくい理由を、医学的・社会的・伝統医学(中医学)から解説します。
目次
1. 大正〜昭和初期に高齢出産が多かった理由
当時の統計を見ると、40代での出産は珍しくなく、50代での出産記録すらあります。
しかし、その背景には次のような事情があります。
① 出産回数が多かった
- 大正〜昭和初期は避妊の普及率が低く、結婚後はほぼ毎年妊娠するケースも。
- 5人〜10人の子どもを産む家庭も珍しくなかったため、必然的に40代での妊娠も増える。
- 高齢での出産は**経産婦(すでに複数の出産経験あり)**がほとんど。
② 平均初婚年齢が若かった
- 初婚年齢は20〜23歳が一般的。
- そのため、40代であっても結婚生活20年以上 → 妊娠チャンスが多かった。
③ 記録の“生き残りバイアス”
- 医療技術が未発達で、流産・死産・乳児死亡は非常に多かった。
- 出産記録に残るのは「生きて生まれた赤ちゃん」のみ → 実際の妊娠成立率は現代より低い可能性も。
2. 現代女性が妊娠しにくくなった理由
① 出産年齢の高齢化
- 厚労省データ:初産年齢は 大正時代 24歳 → 現在 30.9歳。
- 卵子は生まれた時点で数が決まっており、加齢とともに質も低下。
- 35歳を超えると妊娠率は急激に低下し、流産率も上昇。
② 栄養バランスの変化
- 昔:旬の野菜・魚中心、食品添加物少なめ。
- 今:加工食品・糖質過多・トランス脂肪酸が増加 → ホルモンバランスや卵巣機能に悪影響。
- 鉄・亜鉛・ビタミンB群不足 → 排卵障害・着床不全のリスク。
③ 生活習慣・ストレス
- 長時間労働・夜勤・スマホ夜更かし → 睡眠不足でホルモン分泌低下。
- 精神的ストレス → 視床下部の排卵コントロールが乱れる。
- 共働きで性交タイミングが排卵期と合わない。
④ 環境要因
- 環境ホルモン(プラスチック・農薬・化粧品成分など)による生殖機能低下。
- 都市部の大気汚染も卵巣予備能低下に関与。
3. 昔と今の「高齢出産」の本質的な違い
| 比較項目 | 大正〜昭和初期 | 現代 |
|---|---|---|
| 初婚年齢 | 20〜23歳 | 29〜31歳 |
| 出産回数 | 5〜10人が多い | 1〜2人が主流 |
| 高齢出産 | 経産婦が多い | 初産が多い |
| 妊娠チャンス | 年間通して頻繁 | 排卵期に合わせる必要大 |
| 栄養状態 | 季節の自然食 | 加工食品・栄養バランス乱れ |
| 医療 | 流産・死産率高い | 妊娠維持率は高いが成立率は低下傾向 |
4. 中医学から見た「現代女性の妊娠しにくさ」
中医学では、生殖力は「腎」と深く関係します。
現代女性は以下の状態に陥りやすいと言われます。
腎虚(じんきょ)
- 腎の精が不足し、生殖機能が弱る。
- 原因:夜更かし・冷え・過労・長期ストレス。
気血両虚(きけつりょうきょ)
- エネルギー(気)と血が不足し、子宮が十分に養われない。
- 原因:偏食・極端なダイエット・慢性疲労。
肝鬱(かんうつ)
- ストレスで気の流れが滞り、ホルモン分泌が乱れる。
- 原因:精神的プレッシャー・感情抑圧。
5. 妊娠力を守るためにできること(現代編)
- できるだけ若いうちに妊活スタート
- 栄養バランスの見直し(鉄・亜鉛・ビタミンD)
- 睡眠時間を確保(22時〜2時はホルモン分泌のゴールデンタイム)
- ストレス発散(運動・趣味・カウンセリング)
- 必要に応じて補腎・補血の漢方薬で体質を整える
図解:昔と今の妊娠環境の違い

まとめ
- 昔の高齢出産=妊娠力が高かったわけではない。 出産回数が多く、結果的に高齢での出産もあっただけ。
- 現代女性が妊娠しにくい最大の理由は「妊娠を望む年齢が遅くなったこと」と「生活習慣の変化」。
- 栄養改善・生活リズム・ストレスケア・中医学的体質改善で、妊娠力はある程度守ることが可能。