秋から冬の乾燥で困っている方へ:体質と漢方の考え方

秋から冬にかけて、肌が乾燥したり、乾いた咳(カラ咳)や口の渇きが繰り返し起こる人は多いと思います。乾燥しやすい季節になると、肌がカサカサして粉をふいたり、夜にカラ咳が止まらなくなったりすることがあります。こうした症状は、実は体質の問題が関係しているかもしれません。特に中国の漢方では、これらの症状を「腎」という部分の問題として考えることが多いのです。

目次

「腎」とは?

「腎」と聞くと、西洋医学でいう腎臓を思い浮かべるかもしれませんが、漢方でいう「腎」は少し違う考え方です。腎臓の働きに似ている部分もありますが、漢方では「腎は水をつかさどる」とされており、体の中の水分バランスを調整する役割があります。つまり、体の水分を保つことで、肌の潤いや健康を保つことに関わっているのです。

また、「腎は精をつかさどる」という考え方もあります。この「精」というのは、成長や発育、生殖にとって大切な栄養物質のことで、ホルモンの一部も含まれています。「精」は体のエネルギー源であり、成長や体力を保つためにとても大切です。そのため、漢方の不妊治療では「精」が重要な要素とされています。「精」が不足すると、体全体の元気や免疫力が落ちることにもつながります。

腎陰虚とは?

生まれつき体が弱い人、年を取った人、長い間病気をしている人などは、「腎陰虚(じんいんきょ)」という状態になりやすいと考えられています。これは、体の中の水分や「精」が不足している状態を指しており、次のような症状が現れやすいです:

  • 口が渇く
  • 肌が乾燥しやすい
  • しわが目立つ
  • 手足が熱く感じる

こうした体質の人は、特に秋や冬の乾燥した気候の影響を受けやすく、カラ咳や口・鼻の乾燥といった症状も出やすくなります。また、乾燥によって肌がかゆくなることもあり、特に夜にかゆみがひどくなることで睡眠が妨げられることもあります。このように、腎陰虚は体全体のバランスに影響し、乾燥による問題が起こりやすくなるのです。

肺腎陰虚と八仙丸

乾燥による肌の問題やカラ咳の症状について、漢方では「肺腎陰虚(はいじんいんきょ)」という状態であると考えます。この状態に対しては、「八仙丸(はっせんがん)」という漢方薬が効果的です。

八仙丸は、腎陰虚を改善する「六味地黄丸(ろくみじおうがん)」に、肺を潤す働きがある「麦門冬(ばくもんどう)」や「五味子(ごみし)」を加えた薬です。この処方は、肺腎陰虚を改善し、肌を潤してしわを防ぐ効果があると言われています。そのため、中国では昔から長寿の薬として大切にされてきました。また、肺を潤すことで呼吸器の健康もサポートし、乾燥による咳やカラ咳などの症状を和らげる効果も期待されています。

日本でも「八仙丸」という名前で販売されており、ぜんそくやアトピーなどで肌が乾燥しやすい人にも使われています。特に乾燥が原因で症状が悪化する人には、八仙丸は体の中から潤いを補い、症状を改善する助けになると言われています。乾燥によるトラブルが繰り返し起こる方は、漢方薬の専門店で相談してみるのも良いかもしれません。また、八仙丸は体質をゆっくりと改善していく長期的なアプローチであり、副作用が少ないため安心して使えるのも良い点です。

まとめ

秋から冬にかけての乾燥は、ただの季節の変化ではなく、体質が大きく影響していることがあります。特に「腎陰虚」の体質の人は、体の内側から水分を補うことが大切です。漢方のアプローチは、症状を和らげるだけでなく、根本的な体質改善を目指すことが特徴です。肌の乾燥やカラ咳に悩む方は、漢方的なアプローチで体質を見直してみてはいかがでしょうか?専門家のアドバイスを受けることで、自分に合った方法を見つけることができるでしょう。

また、普段の生活でも乾燥対策を心がけることが大切です。たとえば、水分をしっかり摂ることや、加湿器を使って部屋の湿度を保つこと、肌の保湿ケアをしっかり行うことなどが効果的です。これらの対策と漢方のアプローチを組み合わせることで、乾燥から体を守りやすくなるでしょう。

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