妊活のスタートは夫婦で検査から
英ウィメンズクリニックYouTubeから、不妊検査の紹介です。
今回も、あの先生が、誰にでも分かりやすく解説してくれます。
英ウィメンズクリニックにしのみや院
院長 江夏 国宏 先生
論理的で優しさを感じることができる江夏 国宏 先生です。
不妊の原因は?まずは一通り検査しましょう
不妊治療の第一歩、スクリーニング検査について説明します。
スクリーニングとは、「網羅的な検査」、つまり不妊の原因になりそうな要素を一通り調べるということです。
前回の動画で説明した通り妊娠が成立するには1.射精2.排卵3.受精4.受精卵の移動(卵管内の移動)5.着床という5つのステップを踏む必要があります。
それぞれのステップに関して色々な検査があり、検査に適した時期も違います。
検査の時期は、月経周期の1.序盤2.中盤3.終盤の3段階に分かれます。
序盤と終盤では超音波と血液検査を中盤では超音波・子宮鏡・子宮卵管造影を行います。
今回はまずそれぞれの検査の意図を先ほど述べた5つのステップのどこに関連するのかという観点から説明していこうと思います。
1.射精
精子が検査対象になります。精液検査ですね。
「不妊は女性の問題で自分には関係ない」と思っている男性の皆さん、甘いです。
精液が出ているからと言ってその中に精子が十分いるとは限りませんし、全体的に動きが弱め、というようなことは案外珍しくありません。
さらに精液中に精子が全く見られない「無精子症」の場合はそれだけで不妊の決定的な原因になります。
そしてこの無精子症は実は100人に1人くらいいると言われています。精液検査の時期はいつでも良いので必ず一度は受けておいてください。
2.排卵
ここは卵巣が主役です。
卵巣の役目は貯蔵してある卵子を守りつつ、安定的に排卵させることです。
ですので、2つの視点で評価する必要があります。
1つ目は月経周期が安定しているかどうか、
2つ目は残っている卵子が十分かどうか、ということです。
まず1つ目の月経周期に関してですが、月経周期とは月経が始まってから次の月経が始まるまで何日かかるのか、という意味です。
「月経が何日続くのか」という意味ではありませんので覚えておいてください。
月経周期は大体28日前後という方が多いですが、35日や40日くらいに及ぶという方もおられます。
年齢の影響かもしれませんし、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)という状態にあるのかもしれません。
(PCOSについては別動画に解説あり)他にも、甲状腺の機能が低下していたり、過度なダイエットをしていたり、卵巣機能に影響を与える要因は色々と考えられます。
卵巣機能に関する検査は採血と超音波です。
月経周期のどの辺りなのかで適した検査が異なります。(別動画で解説)
また、基礎体温という言葉をご存知の方も多いと思いますが、毎日基礎体温を測定するのはストレスも大きいですし、情報量の割りに手間もかかりますので、当院では必須とはしていません。
3.受精
卵管膨大部という卵管の先端の広いところで受精します。
ここで鍵を握るのは精子です。
膣から卵管膨大部までおよそ15㎝の距離を移動し、卵子の中に潜り込むわけですから元気のある精子がたくさんいるに越したことはありません。
ただ稀に精子と卵子、単独では問題がなくても受精が起こらないケースがあります。
体質的に精子に対して攻撃を加えてしまう場合もありますし、全く原因不明の場合もあります。
前者は抗精子抗体という血液検査が手掛かりになりますが、後者を突き止める検査はなく、体外受精と顕微受精を両方おこなって初めて明らかになります。
顕微受精、つまり卵子に直接精子を注入する方法であれば受精はするけれども、体外受精、つまり精子に自力で受精させる方法だと上手くいかないというような状況のことを受精障害と言います。
今のところ、なぜこうなるのかはっきりした原因は分かっていません。
4.卵管内の移動
受精卵は卵管膨大部から子宮に向かって移動していきます。
自力では移動できないので卵管が運んでくれます。
ですので、卵管の機能が極めて重要です。
十分な広さがあってヒダがしっかりあることが望ましいのですが、何らかの理由で中が狭くなっていたり、ヒダが少なくなっていることがあります。
場合によっては卵管の中が完全に閉塞していることもあります。
卵管は左右にあるので片方でも通過していれば妊娠は可能ですが、もし両方とも完全に閉塞していたらそもそも精子と卵子が出会えませんので、自然妊娠は不可能ということになります。
卵管が通過しているかどうかは卵管造影という検査で調べることができます。
また、卵管にダメージを与える代表的なものとして、クラミジアという細菌が挙げられます。
卵管の中に蜘蛛の巣のような感染巣を作ってしまうので、卵管の通過性が悪くなります。
クラミジアに感染しているかどうかは子宮の出口をブラシで擦って調べる方法と血液検査で抗体の有無を調べる方法があります。
ただ、クラミジアの感染がないからと言って卵管にダメージがないことの証明にはならないので、実際、卵管の中がどうなっているかは卵管鏡という細いカメラで見なければ分かりません。
卵管鏡は卵管の中をカメラで見つつ、水圧とバルーンで広げるというもので検査と治療を同時に行う方法です。
5.着床
着床の最終目的地は子宮ですから、子宮に何か着床を妨げるものがないか確認する必要があります。
ここで行うのが超音波と子宮鏡です。
超音波では子宮内膜がきちんと形成されているかどうか、あるいは子宮筋腫などによる物理的圧迫を受けていないか、などが分かります。
子宮鏡とは先端にカメラのついた細い管です。
直接子宮の中を見て、超音波では分からないような病変をチェックします。
ラストメッセージ
不妊専門のクリニックを受信すると最初に色々検査があるので何が何だか分からないと混乱してしまうかも知れませんが、概要はイメージできたのではないでしょうか。