日本の漢方薬の原料と加工
漢方薬の原料である「生薬」は薬用植物の特定の部分を「切る」「蒸す」「乾燥」などの加工を加えたものです。
多くが植物の根、果実、種子、葉ですが、他にも牡蠣の殻などのボレイ、動物性の動物生薬、石膏などの鉱物性も使われています。
現在、病院などで処方されている漢方薬の原料の種類は
植物性・菌類 110種類
動物性 5種類
鉱物性 4種類
とされています。
漢方専門店の場合、使用される生薬の種類はさらに多く、また生薬の選び方、加工方法も違うコトがあります。
使用される生薬の種類が多いということは、それだけ、個人に対してきめ細かい対応ができるということになります。
病院などで処方される漢方薬の原料は中国から約80%、日本約15%、ラオス約5%となっています。
原料だけでなく製造の多くは中国で作られています。
日本の漢方薬は中国に追いつけない?
生薬の加工(炮製)について、もう少し掘り下げてみますね。
中国での研修で、驚いたのが半夏に使い方。
胃を整え、吐き気や痰を除く作用のある半夏は、多くの処方に使われています。
中国研修で気付いたことに、半夏には少し毒性があるということ。\
日本にいると、全てが安全という意識がありました。
中国では、加工して毒性を和らげながら使うのですが、日本では生の状態で用いています。
そもそも中国よりも使用量が少ないため、毒性をおさえる生姜と一緒に使うことが多いので問題はないのですが、中国研修から帰って来た時には少し気になっていました。
これ以外にも、代表的な生薬では発汗剤として使われる麻黄には、気管支の痙攣を鎮める作用もあります。
実は、この薬効を引き出すために、蜂蜜で空炒りする必要があるんです。
この加工法を「蜜炙」といいいます。
蜜炙によって発汗作用を半減させ、ゼンソクの発作を抑える作用を強く出せるようになります。
生薬の炮製のことを、古くは炮炙といわれていました。
炮とはモノを包んで焼く、炙とは、肉を火の上であぶる、という意味なんです。
炮製は食べ物の加工技術を、薬へと転用されたんです。
薬食同源ということです。
日本では、どうしても臨床や薬理面での研究に重点がおかれています。
実際に漢方薬、という製品を造るためには、漢方薬の土台の製造技術者(たとえば炮製師)を育てていくことが重要になるのではないでしょうか。