冷え症と冷え性の違い
なんとなく、同じように感じる冷え性と冷え症。
漢字が違うということは、意味も違ってきます。
「冷え性」は冷えやすい体質のこと。
つまり、体が冷える原因ですね。
そして「冷え症」は冷えの症状のことなんです。
つまり、実際に手足の冷えを、感じるという意味なんです。
中医学(中国漢方)では、冷えの自覚症状があれば立派な治療対象です。
症状を自覚できていれば「冷え症」なんです。
中医学では、昔から、この冷えについて、研究されていて、約2000年前に出版された中国古典『傷寒論(しょうかんろん)』や『金匱要略(きんきようりゃく)』には、「手足寒(しゅそくかん)・厥冷(けつれい)・腰中冷(ようちゅうれい)、背悪寒(はいおかん)」などさまざまな冷えについて、書かれています。
そう、冷えには沢山の種類があるんです。
手足の冷えを、漢方では、「厥」(けつ)といいます。
普通であれば温補薬の服用で対応できます。
例外もあるんです。
すこし複雑な症状になるのですが、冷えが表面的な仮の症状という場合です。
表面の冷えが仮、というのは、体内に熱症状が隠れているからなんです。
これを「真熱仮寒」の証といいます。
体の熱が手足に巡らないのは「ストレス」
体に熱があるのに、手足に伝わらないのには、幾つか理由があります。
最初は気厥です。
ストレスや精神的なショックなどが原因で、気の流れが阻害され、末梢血管が収縮して微小循環が悪くなり手足の先が冷えてしまっている状態です。
よくあるのは、緊張のあまり手足が冷たくなったり、冷や汗をかいたりする症状です。
皆さんも、経験、あるのではないでしょうか。
このような場合、気の流れをよくする処方で対処しないと、温補薬では効果がでません。
もう一つにはカゼや感染症などで体内に熱がこもる状態です。
カゼや感染症で熱を外に出さない状態を熱厥といいます。
熱が外へ出ていけない状態のため手足に冷えの症状がでてしまます。
見かけ上、冷えているように見えるのですが、詳しく診察してみると、舌質が赤い、歯ぐきの腫れや口臭がある、尿の色が濃いといった熱性の症状が診られるんです。
ここで判断を間違え体を温める漢方薬を使用すると、さらに熱が上がり、症状が悪化することもあります。
欺されやすい、仮の症状。
病気の本質を間違いやすいんです。
このような症状の、カゼ、感染症などの場合、寒涼薬なんです。
冷えに寒涼薬を用いることを「寒因寒用」といいます。
冷えてるのに、冷やす。
一般的な治療原則を学ぶことは大切です。
実際の臨床で例外的なことにも経験で知っておかないと、漢方薬を使いこなすことはできないんです。