不妊治療で精子を選ぶ理由:精子の情熱大陸

男性不妊治療ではDFI検査で精子のDNA断片化率を出す事が出来るようになりましたが問題点としては検査後の精子が使えない事でした。
しかし最新男性不妊治療ではこのDNA断片化した精子を見分ける事が出来るようになりました。

その前に精子の本質について、もう一度、確認してみましょう。

成熟精子選択法について精子とは?(精子DNAの視点から)

不妊治療において、精子の話題になることは比較的少ないのではないでしょうか?
この傾向が、不妊治療に対する夫婦の温度差や、男性を傍観者にしてしまう原因のひとつかもしれません。

今日はDNAという視点から精子と卵子を考えてみたいと思います。

卵子も精子も同じ量の30億のというDNA情報を有し、DNAという視点では平等であり、新しい生命にはどちらも同等に必要不可欠です。

私たちヒトのカラダは約60兆個の細胞からできています。
その細胞には60億個ずつDNA情報(アデニン、グアニン、シトシン、チミンの塩基情報)が核の中に大事に保管されています。

DNAは親(祖先)から受け継いだ遺伝情報を有していると同時に、私たちのカラダ(タンパク質)をつくるための設計図です。

この大事な情報であるDNAは、紫外線や活性酸素のような外敵に日々攻撃されて破壊されたりします。しかしながら、細胞にはこの破壊されたDNAを修復する機能が備わっているというのも生命の神秘ですね。

ヒトは60億個のDNA情報を有してヒトがヒトであることが出来るのですが、不思議なことに生殖細胞の精子と卵子だけは減数分裂して半分の30億個の情報しか有していません。

この精子と卵子が“受精”により30億+30億=60億と再び60億の情報となって新しい生命になります。精子も卵子も同じDNA情報量を有していますが、形態は大きく異なります。

卵子サイズは精子頭部の約10万倍の体積を有し、言わばゾウとネズミくらい大きさが異なります。
卵子は毎月平均1個排卵されるのに対し、精子は毎日約5,000万~1億匹つくられます。

卵子は球形であるのに対し、精子には鞭毛というシッポが生えてオタマジャクシのようです。オタマジャクシは細胞の集合体である“生物”ですが、精子はたったひとつの“細胞”です。
脳細胞も神経細胞も無いたったひとつの細胞が何故このようなカタチになったのでしょうか?

その進化の過程は誰にも分からず神秘的ですが、現状の目的はただひとつ。

それは長距離を泳いで卵子に30億のDNA情報を届けるため。
ただその目的のためだけに生まれ、精子のDNAを卵子に送り届けるためだけにそのカタチになったのです。
長距離を泳ぐためには身軽にならなくてはなりません。元々円形細胞であった精子も細胞質を全部外へ吐き出し、小さい頭部にほぼDNA情報だけをコンパクトに凝集させて長旅の準備をするのです。

この“身軽になる”という行為はある意味諸刃の剣であり、DNA修復機能を失ってしまいます。
長旅で活性酸素などから攻撃を受けて傷ついたとしても自己修復できないのです。
そこで少しでも攻撃から身を守ろうと精子は集団でスクラムを組むように一斉にこの長旅に出ます。

数千万匹から1億匹という精子の中でこのサバイバルゲームに生き残るのはたった一匹。
たどり着いた精子は減数分裂の途中で休止している状態の卵子を起こして活性化します。
無事に自分のDNAを届けた暁には傷ついた箇所を受精卵が修復してくれようとします。

何か眠っている白雪姫を王子様が目覚めさせに行くような、攻撃を受けた戦士を看病してくれる癒しの女神のようなお話です。
そんなドラマが繰り広げられている精子と卵子の受精ですが、その精子の目的を理解すれば自ずと私たちが何をすべきか見えてきます。

精子の目的はただひとつ。DNA情報を壊さずに完全な状態で卵子に届けるということ。
精子が自分でその道を選んだのか、神が精子にその使命を与えたのかは分かりませんが精子はそうなったのです。
精子工場という精巣は1億匹×30億DNA情報=30京個のパーツを今日も組み立て頑張っています。

精子の断片化が、不妊治療に与える影響については次回に続きます。

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