時間栄養学からみた「朝ご飯」の大切さ
「朝ご飯」は、単に、朝に食べる食事であるということだけでなく、特別な意味や役割があるということを知ってほしいと思います。
繰り返しますが、時計細胞は、脳の視床下部のメイン時計と全身の細胞にあるサブ時計が、密で、繊細、かつ、複雑なネットワークを形成しています。
そして、それは、朝をコントロールする仕組み、昼をコントロールする仕組み、そして、夜をコントロールする仕組みで構成されているのですが、中でも、からだにリズムをつくりだす主役は「朝」の機構と考えられています。
やはり、朝は1日のはじまりで、起点になるということからでしょうか、朝に摂る栄養である「朝ごはん」が体内時計の精度に大きな影響を及ぼします。
そのため、体内時計のメンテナンスは「朝」が鍵になります。
朝ご飯は体内時計をリセットする
1日は24時間ですが、実は、体内時計は1日25時間刻みなのです。そのため、体内時計は、毎日、きちんとリセットしてあげなければ、どんどん、ずれていく宿命にあります。
リセットの方法は、朝起きてから1時間以内に朝食を食べることと光を浴びることです。
朝食は、毎日、決まった時刻に、炭水化物とたんぱく質を食べることで最もリセット効果が高まることが知られています。
消化器官の活動や糖質やアミノ酸の吸収によってそれぞれの臓器の時計遺伝子が発現し、脳のメイン時計に「朝が来た!」と伝えることで体内時計がリセットされるからです。
そのため、同じ朝食でも、パンとコーヒーだけ、サラダだけというより、朝の洋定食や和定食のようにバランスよく食べるほうが、体内時計のリセット効果が高くなり、からだのリズムが整いやすくなります。
朝食は体温を上げる
体温は朝に最も低くなり、起床後、徐々に上がっていきますが、朝食を食べると「スムーズに」上昇します。
なぜなら、食べて、「熱」が産み出されるからです。
食物を噛んで、飲み込み、消化し、吸収する、といった活発な活動によって、「熱」が産み出されるのです。
そして、この熱の産生量は炭水化物や脂質よりも、たんぱく質を食べた時に最も大きくなります。
そのため、当然と言えば、当然ですが、朝食を食べる人のほうが、また、たんぱく質を含む朝食を食べる人のほうが体温が高くなるのです。
このことは、単に、朝食を食べることによって発生した「熱」のせいだけではありません。
朝食を食べると副腎皮質ホルモンの分泌リズムが整うことも一役買っています。
このホルモンは栄養素の代謝やエネルギー産生、インスリンの働きに深く関与しているからです。
朝食時の鉄の吸収力が最も高い
いつ、どう食べるかは栄養素の吸収力にも深く関わっていて、朝は1日で鉄分を吸収する力が最も高いタイミングです。
そもそも、鉄分は良質のたんぱく質やビタミンCと一緒に食べると吸収されやすくなり、卵や納豆に鉄が含まれていますから、それらを朝食に食べるだけで鉄がしっかり摂れるようになります。
朝に鉄分の吸収力が最も高くなるのも体内時計がつくりだすリズムで分泌されるさまざまなホルモンによるものでしょう。
朝食を食べることで1日の食後の血糖値が安定する
朝、昼、夕食と、規則正く食べれば、血糖値はゆるやかに上昇し、ゆるやかに下降し、1日を通して安定します。
ところが、朝食を食べなければ、昼食を食べる前に血糖値が下がりすぎ、その反動で昼食後と夕食後には急上昇します。
からだが飢餓状態になり、それを補おうと、糖質が、速やかに、かつ、大量に吸収されるようになるからです。
当然、血糖値の急上昇に引き続き、インスリンも大量に分泌され、膵臓を疲弊させることになります。
その後、インスリンが効きにくくなり、高血糖状態が続くと、卵の質を悪くしたり、ひいては、卵巣の働きが低下してしまうことになってしまいかねません。
反対に朝食をしっかり食べ、夕食を軽くすると、食後血糖値の上昇がゆるやかになります。
実際に、そのことで、PCOSの女性の卵巣の働きが改善され、排卵率が向上したとの研究報告もあります。