精液は着床環境を免疫的に整えるスイッチをオンにする
まずは結果から。
不妊治療をされるのであれば、SEXは必須ということになります。
精子が着床環境を改善できるとの報告です。
オーストラリアとスペインで体外受精の移植日前後の性交と妊娠率を調べた研究があります(1)。
移植直後の性交は子宮の収縮を招き、着床の障害になったり、感染の原因になったりする可能性があることから、移植後の性交は控えたほうがよいという考え方があります。
ところが、その一方で、射精された精液が子宮や卵管などの女性の生殖器官に触れることで、女性側の着床環境が免疫的に整うことが動物実験でわかっています。
そもそも、女性にとって受精卵は「異物」であり、本来は免疫機能が働き、排除されるのですが、妊娠時には、不思議なことに「異物」を排除しないで、受け入れるように免疫が働きます。
そして、そのスイッチをオンにする役割が精液にあることが動物で確かめられているのです。
そこで、アデレード大学の研究グループは、人間にも同じようなメカニズムが働くのかもしれないと考え、478周期の体外受精の1343個の胚移植で、移植時期の性交の有無による治療成績を比較しました。
その結果、治療周期あたりの妊娠率には差はありませんでしたが、妊娠に至った胚の割合は移植時期に性交があったほうが高いことがわかりました。
もう1つ、性交や精液の注入と妊娠率の関係を調べたメタ解析(過去の複数の研究のデータを収集、統合し、統計的方法による解析)があります(2)。
トータルで7つの無作為比較対象試験(被験者総数2,204名)では、性交があった、もしくは、精液を注入したカップルのほうが妊娠の確率が23%高かったことがわかりました。
人間においても、精液は女性の生殖器官で着床に有利な免疫的働きを促すスイッチをオンにするのかもしれません。
■文献
1)Hum Reprod. 2000; 15: 2653
2)Hum Reprod Update. 2015; 21: 275
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