慢性腎不全・透析患者さんの食事と週末の過ごし方

目次

—初心者にも分かる完全ガイド(最後に中医学の視点つき)—

「何をどれくらい食べればいいの?」「週末に透析が空くのが不安…」——そんな悩みを、数字の目安・具体例・チェックリストで一つにまとめました。最後に中医学(漢方)の考え方も添えています。

まずは全体像:超重要ポイント早見表
• タンパク質
• 保存期(透析前):0.6〜0.8 g/体重kg/日
• 透析期:1.0〜1.2 g/体重kg/日(透析で失われるため“やや多め”が基本)
• 良質タンパク:卵白、白身魚、鶏むね、大豆製品 など
• 塩分(Na):1日6g未満(透析中は4〜6gを目安)
• 水分:「1日の尿量+500ml」を上限目安(氷・ゼリー・汁物も“水分”)
• カリウム(K):高K食を避ける(芋・生野菜ジュース・バナナ等/ゆでこぼしで減らす)
• リン(P):加工品・乳製品・魚卵に注意(必要時はリン吸着薬を指示どおり)
• エネルギー:30〜35 kcal/体重kg/日(やせ・食欲低下時は意識して確保)

目安は個別性あり。必ず主治医・管理栄養士の指示を最優先に。

  1. 基本の考え方(なぜ制限が必要?)

腎臓は、水・電解質(Na/K)・老廃物・酸塩基を調整する臓器。腎機能が落ちると、
• 水分 → むくみ・高血圧・心不全
• カリウム → 不整脈・心停止
• リン → 骨が弱くなる・血管石灰化
• 老廃物 → 倦怠感・吐き気・食欲不振
につながります。透析は助けになりますが、食事管理が“最前線”です。

  1. 項目別:何に気をつける?

タンパク質
• 透析前は取りすぎ注意、透析中は不足注意。
• 良質タンパクを分散して摂る(朝昼夕で均等に)。
• 加工肉は塩分・リンが多くなりがち。

塩分(ナトリウム)
• 減塩=喉の渇きが減る→水分管理が楽。
• だし・酸味・香辛料で満足度UP。
• 外食は“汁完飲しない”が鉄則。

水分
• 指標は尿量+500ml/日。
• 氷を舐める/小さなカップを使う/塩分を控えて喉の渇きを抑える。
• スープ・果物・アイス・ゼリーは隠れ水分。

カリウム
• 多い食材:芋類、ほうれん草、トマト、バナナ、メロン、果物ジュース、生野菜ジュース。
• 小さく切る→ゆでこぼし→水にさらすでカリウムダウン。
• 青汁・スムージー類は基本避ける。

リン
• 多い:乳製品、魚卵、内臓肉、加工品、インスタント。
• パッケージのリン酸塩(pH調整剤等)にも注意。
• 指示があればリン吸着薬を食直前/食中に。

エネルギー
• やせ・食欲↓は予後に影響。
• 油(オリーブ油等)・でんぷん・砂糖を上手に使い、“低たん+高カロリー”を両立。

  1. 透析治療の間隔が開く時(週末・連休)の対策

なぜ危ない?

週3回透析(例:月水金/火木土)だと、金→月の間が最長に。
この間に水分・K・老廃物が蓄積し、心血管イベントや体調不良が起きやすくなります。

だからこそ、“週末こそ慎重に”が合言葉。

週末の食事ルール3か条
1. 水分は「尿量+500ml/日」厳守
• 汁物・鍋・ラーメン・スープ・果物・ゼリー=水分として計上。
2. 高カリウムは回避
• NG例:バナナ/メロン/みかん大量/ポテチ/生野菜ジュース。
• 野菜・芋はゆでこぼしで。
3. 塩分を控える=喉の渇き予防
• BBQ・漬物・加工肉・スナックは塩分とKの二重パンチになりやすい。

外食・イベントのコツ
“汁を残す”“薄味を選ぶ”を徹底。
• 温野菜(ゆで)>生野菜、白身魚>赤身・魚卵。
• 取り分け皿は小さめにしてゆっくり食べる。

週末セルフチェック(朝・夜)
• 体重:前回透析のドライウェイトからの増えを確認(増え過ぎは要注意)。
• むくみ:足の甲・すね・手指。
• 症状:息切れ、動悸、胸痛、しびれ、脈の乱れ、吐き気、極端な倦怠感。
→ 異常があれば連絡体制(透析室/当番病院/#8000等)を事前にメモ。

  1. かんたん献立例(透析期・週末想定)

個別の指示がある場合はそちらを優先。分量は担当栄養士の指示で調整してください。

•   朝:ごはん、卵白のスクランブル(少量の全卵+卵白でボリューム)、きゅうり浅漬け(減塩/軽く水洗い)、麦茶(少量)
•   昼:うどん(つゆは薄め&飲み干さない)、鶏むねの塩麹焼き(薄味)、ゆでこぼし野菜の和え物(ごま少々)
•   おやつ:クラッカー少量 or 低Kフルーツ少量(缶詰ならシロップは捨てる)
•   夜:ごはん、白身魚のホイル焼き(レモン+胡椒で減塩)、キャベツ温野菜、オイル少量でエネルギー補填
•   ポイント:スープ・汁物は“残す”/調理でKを落とす/塩を使わず香りで満足度。

  1. よくある“落とし穴”
    • 「どうせ次の透析で抜ける」は危険。大幅除水=透析中の血圧低下リスク。
    • 青汁・スムージーはK過多。健康食品でも自己判断NG。
    • スポーツ飲料はNa・糖・水分の三重取りになりやすい。
    • 加工食品は見えないリンに注意(原材料のリン酸塩表記をチェック)。

  1. 中医学(漢方)の視点:食養生で“腎と脾”を守る

中医学では、慢性腎不全や透析の状態を「腎虚」(腎のエネルギー不足)を中心に、 「脾虚」(消化吸収の弱り)と「水湿」(余剰水分の停滞)が絡むと捉えます。
対策は、腎精を養い、脾を守り、利水を促すこと。

食材・飲み方(安全第一の使い方)
• 腎を補う:山芋、黒ごま(少量)、黒豆(量は栄養指示内で)、クコの実(数粒)
• 脾を守る:温かく消化の良いもの(おかゆ、煮込み、白身魚のスープ)
• 利水:はと麦茶、冬瓜、とうもろこしのひげ茶(濃すぎ&飲みすぎ注意/水分制限内で)
• 避けたい調理:冷たい・生のものばかり、辛すぎ・しょっぱすぎ(脾を傷め、水分をためる)

週末(間隔が開く時)の中医ポイント
• 温・淡味(温かく薄味)で脾を守り、隠れ水分を抑える。
• むくみやだるさ=水湿サイン。食べ過ぎ・冷やし過ぎを避け、早寝で回復。

漢方薬・サプリの注意
• 自己判断は避ける(処方によりNa/Kや血圧・体液に影響)。
• 例:甘草(カンゾウ)を多く含む方剤は血圧や電解質に影響し得る。
• カリウム・ナトリウム・アルミニウム含有の可能性がある健康食品も主治医に相談。

まとめ
• 食事管理の柱はタンパク・塩分・水分・カリウム・リン+十分なエネルギー。
• 週末・連休は蓄積しやすい——水分・K・塩分を特に厳格に。
• 中医学では腎と脾を守り、水湿をさばく食養生が基本。ただし現代医学の制限を最優先。
• 不安な時は「事前に計画」「小さく慎重に」「医療チームに相談」でいきましょう。

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