流産の原因は精子かもしれないという事実

目次

3回以上続けて流産は男性の精子に問題があるかも

ここ数年不妊原因のひとつとして精子のDNA断片化が注目されています。
一般のネットニュースなどでも見かけるようになってきました。
そもそも、流産を複数回、経験している女性が多いんです。
ナゼ?
女性側だけの問題なのでしょうか?
最近の研究では、男性側の問題も大きいようです。
不妊治療で、精子が正常と言われているから、精子は大丈夫って思っていますよね。
精子には沢山の遺伝情報を持っています。
遺伝情報は、普通、目で見ることができません。
つまり一般の精子検査では本当に正常なのかどうかは目安でしかない、と言うことなんです。
もしかしたら、パートナーを変えることで改善するかもしれない可能性さえあるんです。
実際に調査してみると、3回以上、続けて流産した女性のパートナーのはDNAの損傷が2倍も多かったとのこと。
精子は男性の健康のバロメーターでもあります。
つまり、より健康でいることが良い精子に繋がります。
規則正しい生活習慣、食事、睡眠、運動をしっかりと管理することで、改善するかもしれません。

繰り返し流産するのは精子のDNA異常のせいかも

3回以上続けて流産したパートナーを持つ男性50人の精液の質の調査を、英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)医学部の研究チームが行いました。

調査結果は健康な妊娠期間、つまり出産まで経過した夫婦の男性、60人の精液の健康状態と、流産を3回続いた夫婦の男性を比較。
流産を繰り返した夫婦の男性は、精子のDNAの損傷が2倍多かったことが報告されました。

参照:January 4, 2019, Imperial Collage London

男性は不妊の原因を意識していない

流産は女性だけの問題ではないのは多くの研究で男性の精子に問題であることがわかってきました。
特に、この研究では精子の異常が不妊の原因に大きく関与しているとされています。
事実はそうであっても、現状はどうでしょう。
自分が原因であるかもしれない、ということを男性の多くは意識していません。
なぜなら、男性は不妊と関係ないと思っているからです。
意識として流産するのは女性、妊娠するのも女性、出産するのも女性。
不妊とは関係無い、という意識が、どうしても男性側にあるのではないでしょうか。

不妊治療について男性は自分から学ぶことが大切

不妊治療を学ぶ、というと多くの男性はネットで調べます。
ネットだと、どうしても都合の良い部分だけ、読みやすい情報だけになりがちです。
また、古い情報が上位に表示されることもあり、最新情報を医師や専門家から聞いている女性側と対立することさえあります。
まずは不妊治療の「本」を読むことをオススメします。
本は、出版社や著者が特定されているため、情報に偏りが少ないんです。
また、本なので、一部の情報だけでなく、全体的な「不妊治療」についても書かれている場合が多いんです。
そうすることで不妊治療の全体的なことを理解できます。

ネットで学ぶことで妊娠率が下がることも

ネットで調べることは悪いコトではありません。
ただし、情報や状況を理解できるくらい、不妊治療について学んでおいてください。
知識がないのに人の成功例や失敗例などを読んで自分で判断してしまう方が多いんです。
スゴく、怖いことではないでしょうか。
もしかしたら、妊娠率を下げるようなことを、しているかもしれないんです。
妊娠しやすい体作りとは、出産までのことをいいます。
妊娠反応を目指しているのではないはずです。
でも、ネットでの情報はどうでしょう?
出産までの体験談ってスゴく少ないと思いませんか。
どんな情報が自分にとって必要なのか、ということが判断できるように少しだけ勉強してみてくださいね。

男性の禁欲期間はデータよりイメージ?

男性の禁欲期間については、ネットで検索すると古い情報やデータが、上位に表示されてしまうことがあります。
10年前のデータや情報と今では、男性の精子についての常識が大きく違います。
不妊治療は女性だけでなく、男性不妊治療も日々、新しくなっています。

気になる精子の状態

タイミング法や人工授精、体外受精においても精液所見が良い方が、治療結果も良くなるのは、皆さん知っていることです。
知っているからこそ「勝負の日」に向けて、精子のコンディションを整えたいと考えるのは普通のコトだと思います。
ここで、大きな問題があります。
女性が、いくら望んでも、頑張っても、精子の質を整えることは難しいということ。
そのために、男性だけでなく女性も、精子について知っておくことで妊娠率を上げることができるんです。

妊娠率を上げるために、女性は頑張っています。
さらに妊娠率を上げるために、精子の状態を整えることが必要になってきています。
なぜなら、これ以上、女性は頑張れないから。
そこで、男性が精子のために最初にできることして、禁欲があります。
なかなか、正しい情報が無いのが禁欲期間です。
禁欲期間が長ければ、長いほど「精子の質」が上がりそうなイメージってありますよね。
実際には、どのくらいの禁欲期間が良いのでしょう。

ということで、ここで「禁欲期間」についての珍しい研究報告です。
まずは、グラフを見てください。

ハッキリと分かることがあります。
それは、禁欲期間の違いによって胚盤胞到達率が違うということ。
胚盤胞到達率が妊娠率に繋がっていきます。
結果から、禁欲期間が長いより短い方、それも、より短い方が妊娠に繋がっています。
特に0日から2日という禁欲期間が胚盤胞達成率で最も良い日数となっています。
ある意味、禁欲より毎日の性交渉の方が良いのでは、と思えるくらいです。

禁欲期間についてのまとめ

1) 禁欲期間が長いほど、酸化ストレスにより精子のDNA損傷が増加する
2) 体外受精の媒精では、通常法・顕微法とも禁欲期間は0~2日間の結果が良い(とくに顕微授精では短いほうがよい)
3) 禁欲期間を短くすることにより、胚盤胞形成率、良好胚盤胞率が改善する可能性がある
4) タイミング法や人工授精でも、男性の禁欲期間は2~3日間が良い結果に繋がる

精子は妊娠するためにDNAを損傷しやすい形態になった

近年の精子検査では、精子のDNA検査が重要になっているということは、理解できましたね。
見かけに惑わされないこと。
そのために、どんなに正常に見えたとしても実際のDNA、つまり中身がどうなっているのかを調べるようになってきています。
今までの検査で正常であったとしても、これからの検査では問題になる可能性がでてくることがあるからです。
いままで健康だと思っていた男性は、精子が問題で妊娠しにくい、ということを知るコトに。

最近、注目されているのが男性不妊治療で、広がっているDFI検査。
精子のDNA断片化率がわかります。
この検査での問題点として、検査後の精子が使えなくなるということです。
検査で、どんなに良い精子とわかっても検査後に使えないというのがデメリットなんです。

なぜ、今、精子が注目されているのか

男性の精子が注目されるようになったのには、検査方法が増え、以前より簡単になってきたからです。
最新男性不妊治療で、DNA断片化した精子を見分ける事も可能になっています。
つまり、正常なDNA精子だけを分ける技術。

精子の不妊治療での役割について確認してみましょう。

成熟精子選択法について(精子DNAの視点から)

今までは、不妊治療において卵子ほど精子が話題になることって少なかったはず。
話題にならない、ということは不妊治療に対する夫婦の温度差や男性を傍観者にしてしまう原因のひとつでした。

妊娠は、卵子と精子が出会うからこそ成立します。
そして卵子と精子に優劣はありません。
なぜか女性だけの問題にされがちですが、卵子(女性)、精子(男性)どちらも同じ役目と同じ責任があります。
男性側の意識が、この事実を認められない状況があります。

そこで、DNAという視点から精子と卵子を考えてください。

卵子も精子も同じ量の30億のというDNA情報を有し、DNAという視点では平等であり、新しい生命にはどちらも同等に必要不可欠。

私たちヒトの体は約60兆個の細胞からできています。
その細胞には60億個ずつDNA情報(アデニン、グアニン、シトシン、チミンの塩基情報)が核の中に大事に保管されています。

DNAは親(祖先)から受け継いだ遺伝情報を有していると同時に、私たちのカラダ(タンパク質)をつくるための設計図なんです。

この大事な情報であるDNAは、紫外線や活性酸素のような外敵に日々攻撃されて破壊されたりします。
しかし、細胞にはこの破壊されたDNAを修復する機能さえ備わっているんです。
まさに生命の神秘ですね。

ヒトは60億個のDNA情報を有してヒトがヒトとして存在しています。
ところが、不思議なことに生殖細胞の精子と卵子だけは減数分裂して半分の30億個、つまり半分の情報しか持っていないんです。

精子と卵子が“受精”により30億+30億=60億と再び60億の情報となって新しい生命になるということです。
受精、妊娠、出産、は男性にも50%の役割があるということです。
ただし、精子も卵子も同じDNA情報量を有しているのですが形態は大きく違っています。

そもそも、大きさが違います。
卵子は顕微鏡でしっかりと見えますが精子は顕微鏡で見るのは難しいくらい小さいんです。
卵子サイズは精子頭部の約10万倍の体積です。
10万倍って想像を超えていますよね。
例えるとゾウとネズミ?
もちろん、ゾウが卵子でネズミが精子。
大きさが、これ程違っていてもDNA情報量は同じって、精子、大丈夫?

他にも違いがあります。
卵子は毎月平均1個排卵されるのに対し、精子は毎日約5千万~1億匹も産まれています。
大事なコトなので、繰り返しますね。
毎日です。

さらに、形態が全く違います。
卵子は球形です。
ところが精子は、鞭毛というシッポが生えているんです。
まるでオタマジャクシ。
オタマジャクシは細胞の集合体である1つの生き物、つまり「生物」。
しかし精子はたったひとつの「細胞」なんです。
脳細胞も神経細胞も無いたったひとつの細胞。
それが「精子」。

何故このようなカタチになったのでしょうか?

その進化の過程は分かっていません。
知りたくなりますが、ただ、精子の目的は、、、

メチャクチャ長距離を泳いで卵子に30億のDNA情報を届けるため!

その目的のためだけに生まれ、精子のDNAを卵子に送り届けるためだけに、そのカタチになったんだと思います。
長距離を泳ぐためには身軽であることが重要。
元々は円形細胞である精子も、細胞質を全部外へ吐き出し、小さい頭部にほぼDNA情報だけをコンパクトに凝集させて長旅の準備をしているんです。

この「身軽になる」ことで、とても大切な機能を失っています。
それがDNA修復機能。
長旅で活性酸素などから攻撃を受けて傷ついたとしても自己修復できないんです。
そこで少しでも攻撃から身を守ろうと精子は集団でスクラムを組むように一斉に移動するんです。
数で勝負ということでしょうか。

数千万匹から1億匹という精子の中でこのサバイバルゲームに生き残るのはたった一匹。
たどり着いた精子は減数分裂の途中で休止している状態の卵子を起こして活性化します。
無事に自分のDNAを届けると、ここで、ようやく傷ついた箇所を受精卵が修復してくれようとします。

ドラマのような精子と卵子の受精の旅です。
大切なことは精子の目的を理解していなかった、ということ。
目的を理解できれば、私たちが何をすべきか見えてくるはずなんです。

精子の目的はただひとつ。
DNA情報を壊さずに完全な状態で卵子に届けるということ。
精子が自分でその道を選んだのか、神が精子にその使命を与えたのかは分かりませんが。
精子工場という精巣は1億匹×30億DNA情報=30京個のパーツを今日も組み立て頑張っているんです。

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