尿漏れは肺を丈夫にするのが漢方

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中医学での肺(はい)は、働き者なんです

肺は中医学(中国漢方)では呼吸だけではないんです。
気と津液(しんえき)の巡らせる働きがあります。
肺は呼吸によって気の一部となる清気(せいき)を取り入れます。
そして不要となった気である濁気を体の外へ吐き出すんです。
この点は皆さんの知っている肺の働きである酸素の取入れと二酸化炭素の排出に似ています。

肺の働きはこれだけでは無いのが中医学。
肺は脾(ひ)から受け取った気や津液をシャワーのように全身に巡らせます。
まるでスプリンクラーのように、散布するんです。
これを宣発(せんぱつ)といいます。
宣発作用によって散布された津液は身体内で代謝され腎(じん)や膀胱(ぼうこう)へと流れていき(下降)、尿になって、体の外へ出されるんです。
中医学では、この下降性の流れを粛降(しゅくこう)といいます。
つまり、尿も肺がコントロールしているということになるんです。

さらに、大事な肺の働きにバリア機能があります。
宣発は、体の表面に気で外からの邪気を跳ね返すバリアを張ります。
この役割の気のことを衛気(えき)と呼びます。
他にも肺は皮毛(体の表面の毛)や汗腺をコントロールして発汗を調整しているんです。
ここから、臨床です。

症状と関係の無い部分から治療する漢方

中医学(中国漢方)では、症状のある部分を直接、対応せず、症状の無い部分から治療をすることがあります。
これには2つの方法があり、体の上部にある病気を下部から治療することを「上病下取」といいます。
「上病下取」が治療の基本となっているのですが、今回は逆の下部の病気を上部から治療する「下病上取」の例を紹介します。

尿で膀胱をコントロールできるんです

尿の出が悪かったり、尿の量が少ない時、一般的には利尿剤を使います。
まれに、利尿剤を使っても効果がないこともあります。
この様なとき、まず肺に注目します。
生薬には肺(上部)の働きを調整する麻黄や杏仁などがあり、これらをもちいて、肺(上部)の働きを調整することによって、排尿困難(下部)に対処できます。

中医学(中国漢方)では、呼吸器系としての肺の働きの1つに、「通調水道、下輸膀胱」といって、脾胃(消化器系)から吸収された水分を全身に巡らすことで、膀胱にまで運ぶことを助ける作用があるとされています。
この理論を応用することで、排尿をスムーズにできるんです。
スムーズにできる、ということは、頻尿や尿が漏れるといった症状も、肺から治療できるということでもあります。

・話し声に力がない
・階段を少し昇っただけで息切れする
・喘息(ゼンソク)

などの呼吸器系の弱い体質の場合、ちょっと咳こんだだけで尿を漏らしたり、すぐトイレに行きたくなるといった症状があるかどうか確認します。
これらの症状は、上部の肺の働きが低下していることで起こっている可能性があり、下部の膀胱をうまくコントロールできていないんです。
肺の働きを高める漢方薬に肺気を収めて尿の漏れを防ぐ作用をもった生薬などを組み合わせて使うことで、改善できることがあります。

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