自宅で調理しない食事頻度と妊娠しやすさの関係
妊活や不妊治療で、最高のコスパは「自炊」する頻度を増やすこと。
自宅で調理しない食事の頻度が多い人ほど妊娠を試みてから1年以上要する割合が高くなるという研究報告がなされているからです。
どんな研究だったのかと言いますと、2013-2014年、2015-2016年実施の米国国民健康栄養調査(NHNES)のデータを用いて自宅で調理しない食事の頻度と不妊症リスクとの関係を調べたというものです。
日本でも厚労省が国民健康・栄養調査を毎年実施し、発表しています
平成30年「国民健康・栄養調査」の結果
所得により生活習慣や食生活に差
これのアメリカ版のデータを使って、30-49歳の健康な女性2143名に自宅で調理しない食事の頻度と不妊症(妊娠を試みてから1年以上かかる)の割合との関係を調べています。
自宅で調理しない食事については以下のような質問をしています。
・過去7日間の自宅で調理しない(レストランやファストフード店、フードスタンド、食料品店、自販機など)食事の頻度は?
・上記の食事にうち、ファストフード店やピザ店での食事の頻度は?
・過去30日間で食料品店での中食(惣菜、デリ等)を利用した食事の頻度は?(なし/1日1食以下/1日1食より多い)
・過去30日間で冷凍食品を利用した食事の頻度は?(なし/1日1食以下/1日1食より多い)
全体の不妊症の割合は13.5%(286名)だったとのこと。
その結果は、いずれの自宅で調理しない食事の頻度は高いほど不妊症の割合が高かったというものですが統計学的に意味のある差があったのは、全体(自宅で調理しない食事の頻度)とファストフードだけでした。
どれくらいかと言いますと、
自宅で調理しない食事を全くしない人に比べて日に1回以上食べる人は不妊症の割合が2.82倍
ファストフードを全く食べない人に比べて日に1回以上食べる人は2.73倍だったとのこと。
ファストフードの摂取頻度と妊娠しやすさの関係はこれまでも大規模な研究がなされています。
妊婦コホート研究「Screening for Pregnancy Endpoints (SCOPE)研究」という研究に参加した初妊婦5,628名に初検診時(妊娠14-16週)に、妊娠前1ヶ月間の果物やファストフード、野菜、魚の摂取頻度を思い出して回答してもらい、妊娠するまでにかかった期間との関係を調査したというものです。
その結果はとても興味深いもので、果物の食べる頻度が少ない女性ほど、また、ファーストフードを食べる頻度が多い女性ほど、妊娠迄の期間が長くなり、妊娠迄に1年以上かかることが多かったというのです。
どれくらいかと言いますと、
1日に果物を3回以上食べる女性と比べて
1日に1、2回食べる女性は妊娠迄の期間が6%
週に1-6回食べる女性は11%
月に2、3回食べる女性は19%
ぞれぞれ、妊娠する迄に長くかかったとのこと。
反対に
ファーストフードを週に4回以上食べた女性に比べ
週に2、3回食べた女性は妊娠迄の期間が11%
週に1回の女性は21%
そして、食べなかった女性は24%
それぞれ、短かったとのこと。
ファストフードなど、自宅で調理しない食事をする頻度が多くなると妊娠する力にはマイナスになるようです。
その原因までは調べられていませんが、ファストフードをよく食べる人は、もちろん、栄養バランスが偏るということが考えられますが、そんな直接的な影響だけでなく、炎症体質になりやすかったり、体内のフタル酸エステルという化学物質の濃度が高いことも研究で知られています。
フタル酸エステルはプラスチック製品を柔らかくしたり、加工をしやすくしたりする可塑剤として幅広く使用されている化学化合物で内分泌撹乱作用による生殖機能へのマイナスの影響があることが懸念されています。
ハーバード大学のEARTH研究では尿中からフタル酸エステルが検出される女性は検出されない女性に比べて採卵数が少なかったり、妊娠率が低かったりするという報告がなされています。
■文献
1)J Prev Med Public Health 2020; 53: 73.
2)Hum Reprod 2018; 33: 1063
3)Environ Health Prospect 2016; 124: 1521.
4)Environ Health Prspect 2016; 124: 831