着床率アップは腸内環境と口腔内環境が重要ということがわかってきた
口腔内フローラと妊娠の関係の論文をJournal of Oral Microbiology で見つけましたので和訳して解説致します。
『歯周病は妊娠を遅らせるかもしれない』
Journal of Oral Microbiology
唾液中に歯周病の原因細菌や原因細菌の抗体が検出された女性は検出されなかった女性に比べて妊娠するまでにより時間がかかることをフィンランドで実施された試験で明らかになりました。
ヘルシンキ大学の研究チームは歯周病が妊娠しやすさに及ぼす影響を調べることを目的に妊娠を希望する256名の女性を対象に唾液と血液を採取し、唾液中の歯周病原因細菌(Porphyomonas gingivalis、Actinobacillus actinomycetemcomitans)、また、唾液と血液中の歯周病菌の抗体を検査し、12ヶ月間、妊娠の成立を追跡調査し、それらの関係を解析しました。
その結果、1年で256名中、205名が妊娠し、51名は妊娠しませんでした。
約4倍も妊娠できない確率
妊娠しやすさと有意な関連がみられたのは、唾液中のP.gingivalisの検出と唾液中のP.gingivalisとA.actinomycetemomitans抗体のレベルでした。
唾液中にP.gingivalisが検出された女性の割合は、妊娠できた女性(2.1%)よりも妊娠できなかった女性(8.3%)で有意に高く、唾液中の歯周病原因細菌の抗体レベルは妊娠できなかった女性のほうが妊娠できた女性よりも有意に高いことがわかりました。
また、唾液中にP.gingivalisが検出され、かつ、P.gingivalis抗体レベルが高かった(全体の上位3分の1)女性はP.gingivalisが検出されず、かつ、抗体レベルが低かった女性に比べて、12ヶ月間で妊娠できない確率が3.75倍高いことがわかりました。
歯周ポケットと妊娠
さらに、歯周ポケット(歯と歯茎の境目が深くなった状態)がある女性で血液中のP.gingivalis抗体レベルが高ければ12ヶ月で妊娠できない確率が1.62倍でした。
このことから、唾液中の歯周病原因細菌の検出やその抗体レベルは不妊症のリスクファクターになり、歯周病は妊娠するまでに時間がかかる可能性があることがわかりました。
歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患で、歯と歯肉の境目(歯肉溝)の清掃が行き届かないでいると、そこに多くの細菌が停滞し(歯垢の蓄積)歯肉の辺縁が「炎症」を帯びて赤くなったり、腫れたりします(痛みはほとんどの場合ありません)
日本臨床歯周病学会のサイトより
歯周病は全身の疾患に関連すると考えられていて、これまで低出生体重児や早産のリスクが上昇することがわかっていました。
今回のヘルシンキ大学の研究は歯周病と妊娠する力との関係を調べた初めての研究とのこと。
結果は関連するかもしれないというものでした。
最近の研究では、腸内フローラ、子宮内フローラ、口腔内フローラは連動しており着床に大きく寄与する事がわかってきています。
妊娠を希望する女性は、必ず、歯周病の検査を受けるようにし、歯のメンテナンスを怠らないようにすることが大切です。