先天性の病気と不妊治療(アンチトロンビンIII欠乏症)

Q&A

今回のご質問に関しては、まず、知っておいて欲しいことがあります。

先天性アンチトロンビンIII

先天性アンチトロンビンIII(AT-III)欠乏症は,AT-IIIの活性に起因する先天性血液凝固異常症であり,静脈血栓塞栓症を発症するリスクが高くなります。

特に妊娠分娩,外傷,手術,経口避妊薬内服など,凝固能が亢進するような病態を契機に血栓症を発症することが多く先天性AT-III欠乏症合併妊娠は血栓症のハイリスク患者とされています。
周産期管理について確立した見解は現状では、ありません。

DIC(播種性血管内凝固症候群)

血管内に無数の血栓がばらまかれた、凝固の反応が非常に高ぶった状態の病気を指しています。
「汎発性(はんぱつせい)血管内凝固症候群」と呼ばれることもあります。

DICは元々、がん、白血病、細菌感染症(この3種類の疾患がDICの約3/4を占める)などの病気(基礎疾患)にかかっている患者さんに生じます。

OHSS(卵巣過剰刺激症候群)

卵巣がHMGなどによって過剰に刺激を受けた場合に起こる状態のことです。
通常はhCGの注射後に起こります。
軽症・中等症・重症の3段階があります。
つまり、不妊治療をすることで起こる症状といえます。

質問

現在26歳です。
先天性アンチトロンビンIII欠乏症顕微受精により妊娠6週を経過しました。
現在OHSSの経過観察とヘパリン調整の為入院中なのですが本日より血液内科の先生の方からヘパリンとアコアランという血液製剤を併用すると言う案が出ました。

健常実験で胎児に全く影響がないとは言えないなど副作用がまだあまりはっきりとしていない中でアコアランの使用は断り、安定期まではヘパリン調整の方がいいと思われますか?
今現在AT III(アンチトロンビンⅢ)が33、ヘパリンAPTT45を朝夕12時間置きに使用しています。

アコアランについて調べたのですが、よくわかりません。
6年不妊治療しての授かった子です。
健康に生んであげたい思いが強くあります。

回答

DICを起こす事が考えられるので併用されると良いと思います。

OHSSの経過観察と言うことはさらに血栓症のリスクが上がることになります。

妊娠中のDIC対策が必要となります。

今の優先順位は副作用がどうでは無く命を守ると言う点です。

2点目はDIC対策です。

既往歴からヘパリンは必要となりますが、DIC併発すると妊婦へのヘパリンが出来なくなります。

よってアコアランを併用しながら経過を見ながら(DIC観察)ヘパリン投与量を見直すことになります。

—–妊娠中DICとなると—-

産科領域のDICでは、凝固系と線溶系の活性化がほぼ同時 に起こり急激な経過をたどるため、基礎疾患の除去と併行し て、凝固因子の補充が治療の中心となります。

このため、ヘパリンによる抗凝固療法は出血を助長させる恐れがあります。
そのため、使用しない、できない、ということがあります。

例外も、あります。
産科でのDICでは、急激な経過を辿るA群溶連菌以外の多くの敗血症の場合には、線溶系は抑制に傾くため低フィブリノゲン血症を伴わないため、抗凝固療法としてヘパリン投与が考慮されることがあります。

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